上司はうまく使って、部下には使われる、というのが中間管理職として望ましいリーダーシップのあり方だと思います。女性管理職を含め、大抵のリーダーがよくやってしまうのは、上司からの指示をそのまま部下に丸渡しして、指示もサポートも手薄、というリーダーシップで、決して良いマネジメントスタイルとは言えません。

本来、上司は部下に使ってもらうのが役割であって、決して自分にある肩書き・地位を、自分のために使うものではないと思います。部下が困っているにも関わらず、「自分でなんとかしろ」と助けないままだと、部下は成長しない上に、仕事の効率が悪くなって結果に繋がりません。上司のことを「使える時に、うまく活用する」という認識が、成果を出せるチームにつながる一歩だと思います。

では具体的な「上司を使う」「部下に使われる」という例を見てみましょう。

良い上司は「使われる」ことを歓迎

良い上司は、自分が使われることを大いに歓迎しています。
「自分の権限で、できることがあったらなんでも言って」といつでもウェルカム状態です。

私が課長時代、Aさんという「使われ上手」な部長がいました。
部議に向けたオーソライズの場で、自分が話をする相手は役職が上の方がほとんどでした。大抵の場合は目下の自分の話を広い気持ちで受け止めてもらえるのですが、ごくたまに、役職が自分より下だという理由で話を聞いてくれないという時がありました。そんな時に「じゃあ、一緒についていこうか?」とAさんから申し出てくれたのです。ありがたく同行いただき、Aさんはただ隣に座っているだけで特に発言されることもなかったのですが、それまで受けていた相手からのプレッシャーもなくなり、スムーズに仕事が進みました。その経験があったので、私自身が部長に昇格したあとは、Aさんと同様に、部下の仕事がやりやすくなるためのサポート役に徹しました。よいお手本を体感できたおかげで、部下のモチベーションを下げることなく、仕事もやりやすかったと言ってもらえる上司になれたと思っています。

部下に使ってもらうということ

人事担当課長になった時、年上のベテラン男性部下がいました。私は人事が初めてで右も左もわからず、とりあえず、実務は一切手を出さずに部下に任せ、もし部下が困ったことがあればフォローしよう、と部下からのコミュニケーション待ちでいました。

そんなある日、管理職研修に社員を派遣することになったのですが、主査レベルの人が課長クラスの社員を選抜し、さらにその上司(部長)へOKをもらわなければならず、男性部下は困った顔で私の元へ相談しにやって来ました。私は「では、私が部長のところへ行き、話を通しましょうか」と提案し、選抜の理由、研修の目的など情報をまとめてもらい、無事に部長のOKをもらってくることができました。そのタイミングで、男性部下へ「今後もこのようなことがあったらいくらでも対応しますので、おっしゃってください」と伝え、他にも「現場の◯◯さんと仲が良いので、◯◯さんに通したい話があれば振っていただければと思います」など、私自身の社内人脈を活用をおすすめしました。このやりとりを通して、年上のベテラン男性部下は、様々な相談をしてくれるようになりました。

仕事をスムーズに進める「使われ力」

上司をうまく使えないからと言って、そこまで困らないかもしれません。
しかし、上司を使わないと、仕事が進みづらくなり、なかなか成果につながらないでしょう。
組織で働いている人たちにとっては当たり前かもしれませんが、役職がつくと、同じ役職、同列の人と対等に話すのが仕事だ、という認識を持っている人が少なからず存在します。つまり、自分の役職より下の人からは、きちんと話を聞かない人も存在するということです。そんな人にもし出会ったのであれば、上司を使うチャンスです。同列の人と話すことで、相手は素直に話を受け入れてくれ、結果自分の仕事がスムーズに進みます。

社外に対しても、上司を上手に使うことは可能です。お客様がお怒りになって現場担当者では収めきれない時には上司の出番ですよね。逆に、協力会社の人と連絡が取れずに仕事が進まないと部下が困っている時、チームで話し合って「部長の私が怒っているとメールで書いてみよう」と一芝居打ち、その後現場の作業が一気に進み、かつ、現場で対応している部下と協力会社の人たちの関係性は険悪にならず事なきを得た、という経験をしました。
チームとして成果をあげるためには、部下の仕事に立ちはだかる障害物を、上司というツールを使ってうまく乗り越えてもらうことが近道です。ぜひ、中間管理職の方には「使われ力」を磨いていただければと思います。